リアルな日々

デジタルを閉じて、心と体が受け取る「非視覚」のメッセージ

Tags: デジタルデトックス, 五感, 感覚, 心身の健康, リアルな活動

デジタル漬けの日々で、見過ごしていること

私たちの多くは、仕事でもプライベートでもデジタルデバイスに囲まれて過ごしています。パソコンの画面を凝視し、スマートフォンの小さな文字を追い、流れてくる情報を目で処理し続ける。視覚は私たちにとって非常に重要な感覚ですが、デジタル利用が中心となるにつれて、私たちの感覚は「視覚」に偏りやすくなっているのではないでしょうか。

一日中画面を見続けた後に感じる目の疲れや肩こり、頭の中の情報の洪水。これらはデジタル利用による心身への負担の兆候かもしれません。そして、この視覚偏重は、私たちが現実世界から受け取る多様な情報や、そこから得られるはずの豊かな「気づき」を見過ごさせてしまう可能性があります。

非視覚感覚がもたらす「心と体からのメッセージ」

私たちが持つ感覚は、視覚だけではありません。聴覚、触覚、嗅覚、味覚といった、いわゆる「非視覚」の感覚も、心や体、そして周囲の世界との繋がりを感じる上で非常に重要な役割を果たしています。

デジタルデバイスと向き合う時間は、どうしても視覚情報が圧倒的になりがちです。しかし、意識的にデジタルから離れ、他の感覚に焦点を当てる時間を持つことで、私たちの心身は新たな刺激を受け取り、思わぬメッセージを感じ取ることができます。これは、デジタルな情報処理とは異なる、より根源的で、心身に深く働きかける種類の情報です。

日常で「非視覚」を意識する時間を持つ

では、具体的にどのように非視覚感覚を意識する時間を持てば良いのでしょうか。特別なことをする必要はありません。日々の暮らしの中で、少しだけ意識を向けるだけで、私たちの五感は研ぎ澄まされ始めます。

聴覚を澄ませる:デジタル音以外の音に耳を傾ける

通勤中の電車の音、街のざわめき、自宅での静寂、窓の外の鳥の声や風の音。私たちは日常的に様々な音に囲まれていますが、スマホを見ていると、それらの音はただの背景ノイズになりがちです。意識的にデジタルデバイスから目を離し、周囲の音に耳を傾けてみてください。雨粒が窓を叩く音、遠くで響く子どもたちの声、時計の秒針の音。これらの音は、その瞬間のリアルな状況や、自身の内面の状態を静かに伝えてくれます。音楽を聴く際も、画面を見ながらではなく、音そのものに集中することで、その響きや旋律が心に深く染み渡るのを感じられるでしょう。

触覚を意識する:モノの質感や体の感覚を感じる

私たちは様々なモノに触れて生活しています。着ている服の肌触り、デスクの天板の質感、手に取った本の紙の感触、淹れたてのコーヒーカップの温かさ。デジタルデバイスの滑らかな画面とは異なる、多様な質感に意識を向けてみましょう。また、椅子に座っている時の体の重み、風が頬を撫でる感覚、歩く時の足裏の感触など、自身の体から送られてくる感覚も重要なメッセージです。これらの感覚に意識を向けることは、自身の体と向き合う時間となり、知らず知らずのうちに溜まった緊張に気づき、緩めるきっかけを与えてくれます。手仕事や料理など、手を使って具体的なモノを作り出す活動は、触覚を大いに刺激し、デジタル作業による思考の偏りを調整する助けになります。

嗅覚と味覚を味わう:香りや風味に心を開く

私たちは日々様々な香りに触れています。焼きたてのパンの香り、淹れたてのお茶の香り、雨上がりの土の匂い、季節の花の香り。これらの香りは、記憶や感情と強く結びついており、一瞬で私たちを特定の時間や場所へ連れて行ってくれます。食事の際も、画面を見ながら hastily(急いで)食べるのではなく、一口ごとにその風味や食感をじっくりと味わってみてください。食材そのものの味、スパイスの香り、温かさや冷たさ。味覚と嗅覚は連携して働き、私たちに豊かな食体験をもたらしてくれます。意識的にこれらの感覚に焦点を当てることで、私たちは日々の小さな喜びに気づき、心身のリフレッシュを図ることができます。

非視覚感覚がもたらす変化

意識的に非視覚感覚を研ぎ澄ます時間を持つことで、以下のような変化を感じられるかもしれません。

デジタル必須の時代でも、非視覚の時間を大切に

仕事でデジタルデバイスが必須である方でも、これらの「非視覚の時間」は短い休憩時間や移動中、食事の時間など、意識すれば日常の中に組み込むことができます。例えば、ランチの際に数分だけスマホを置いて食事の風味に集中する、休憩時間に窓の外の音に耳を澄ませる、寝る前にアロマを焚いて香りに意識を向けるなど、できることから始めてみてはいかがでしょうか。

デジタルな情報は私たちの生活を便利で豊かにしてくれますが、それだけでは得られない、心と体からの繊細なメッセージや、現実世界の豊かな感覚があります。意識的に非視覚感覚を研ぎ澄ます時間を持つことは、デジタル利用による心身の偏りを調整し、よりバランスの取れた「リアルな日々」を取り戻す一歩となるでしょう。