リアルな日々

デジタルを閉じて「何もしない」時間。心と頭に余白を取り戻す

Tags: デジタルデトックス, 休息法, マインドフルネス, 余白, 脳科学

日々、私たちは大量の情報に囲まれ、スマートフォンやPCの画面を通じて常に何かを見て、何かを「している」状態にあることが多くなっています。仕事でデジタルツールが必須であることに加え、プライベートでもSNSをチェックしたり、ニュースを追ったり、エンターテイメントに触れたりする時間は増える一方です。この「常に何かをしている」状態が、知らず知らずのうちに心身の疲弊につながっている可能性があります。

なぜ「何もしない」時間が必要なのか

意識的にデジタルから離れ、「何もしない」時間を作ることは、現代において非常に重要な意味を持ちます。一見すると、何もせずにただじっとしている時間は「もったいない」「非生産的だ」と感じるかもしれません。しかし、この「何もしない」時間は、脳と心にとって貴重な休息であり、デジタル漬けの日々で失われがちな「余白」を取り戻すために不可欠です。

脳科学の分野では、意図的なタスクを行っていない時に活性化する「デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)」という神経回路が注目されています。DMNは、過去の経験を整理したり、未来の計画を立てたり、自己と向き合ったりする際に働くと言われています。常に外部からの情報を取り込み、特定のタスクに集中している状態では、このDMNが十分に機能しにくいと考えられます。「何もしない」時間は、このDMNを活性化させ、創造性の向上や内省の深化、問題解決能力の向上につながる可能性があります。

また、感情の面でも、「何もしない」時間は重要です。常に情報を受け取っている状態では、自分の内側で起こっている感情や思考に気づきにくくなります。デジタルから離れて静かな時間を持つことで、日々の忙しさの中で見過ごしていた自分の気持ちに気づき、感情を整理する機会が得られます。これは、心の健康を保つ上で非常に大切なプロセスです。

「何もしない」時間を実践する

では、具体的に「何もしない」時間とはどのようなものでしょうか。これは単に暇つぶしをするのではなく、意図的に、特定の目的を持たずに過ごす時間です。例えば、

最初は、何もせずにいることに落ち着かなさを感じるかもしれません。すぐにスマートフォンに手が伸びたり、「何か有益なことをしなければ」という焦りを感じたりすることもあるでしょう。私自身も、最初は5分とじっとしているのが難しく、そわそわしていましたが、意識的に続けることで、少しずつ慣れていきました。

「何もしない」時間から得られる変化

この「何もしない」時間を意識的に取り入れるようになってから、いくつかの変化を感じています。

まず、デジタルデバイスから離れて物理的に距離を置くことで、無意識的な利用が減りました。そして、何も情報が入ってこない静かな時間の中で、ふと仕事のアイデアが浮かんだり、友人との会話で気になったことが整理されたりすることが増えました。これは、常に何かに注意を向けている時には得られなかった、内側からの気づきのように感じています。

また、ただ静かに座っている時間に、鳥のさえずりや風の音、部屋の中の些細な物音など、普段は聞き流している音に気づくようになりました。自分の呼吸や体の感覚にも意識が向きやすくなり、深いリラックスを感じることもあります。これは、五感がデジタル刺激から解放され、本来の感覚を取り戻していく過程のように思われます。

「何もしない」時間を通じて、自分がどれだけ外部からの情報に依存していたか、そして常に何か「生産的」であることを自分に課していたかを客観視できるようにもなりました。そして、「何もしない」こと自体が、心身の健康にとって十分に「生産的」な行為であるという認識を持つようになりました。

余白を持つことの価値

「何もしない」時間は、日々のデジタル生活でぎっしり埋め尽くされたスケジュールの中に意図的に作る「余白」です。この余白が、私たちの心と頭に休息を与え、より健康で創造的な日々を送るための土台となります。

完璧を目指す必要はありません。まずは一日に数分からでも良いので、意識的にデジタルから離れ、「何もしない」時間を設けてみてください。それは、あなたの心と体が本当に求めている休息かもしれません。そして、その短い時間の中に、新たな気づきや心の平穏が見つかる可能性があります。

自身のデジタル利用のあり方を見直し、リアルな日々に意識を向けるための一歩として、「何もしない」時間を取り入れてみてはいかがでしょうか。